今年も、JAPANTEXが東京ビックサイトで開催されています。
JAPANTEXは、豊かな暮らしとインテリア業界の振興を目指し、1982年から40年にわたり開催されてきた、日本最大級のインテリア国際見本市です。
コロナ禍もあって足が遠のいていましたが、久しぶりにこの展示会に足を運んだ理由は、2015年にロンドンで一緒に机を並べた友人が登壇するからでした。
彼女は、カーテンなどインテリアファブリックのスペシャリスト。精通した専門家の意見を拝聴することは、とても勉強になります。
登壇する彼女の顔を見ながら、英国でインテリアを学びたいと思った9年前のことを、昨日のように思い出していました。
私は大学卒業後、いわゆるゼネコンの設計部に所属していました。昔からわりと床や壁や天井の仕上げを選ぶのは得意で、上司にも上手いねと褒められ、その頃はそれで満足していました。
それは今から約30年前のことで、オフィスでは特に白い壁に白い天井が一般的な時代でした。一般的に、オフィスのインテリアでは、窓まわりにはカーテンではなくブラインドやロールスクリーンを採用します。また、クッションなどを置くシーンもほとんどありません。
当時の私は、インテリアの知識もそこまでなく、こだわりもなかったので、何となく感覚でものを決めていました。マンションや銀行系の宿泊施設をデザインする場合も、多くの日本人の思考と同じく、「カーテンやクッションは後から施主が決めることだし、予算も後から適当に決めればいい」と、深く考えることもありませんでした。
しかし約10年前、独立したばかりの頃に、先輩の設計した住宅の竣工写真(家具・カーテンなどが入る前の写真)と、実際に住み始めたオフショットの写真との差を見て、愕然としました。
かっこいい打放しの壁に規則的な窓、モダンでクールな個性が持ち味の建築。そこに置かれていたのは、ゴールドに白の猫脚家具で、窓辺には可愛らしい花柄のカーテンが吊られています。
ダイニングの上には、建築家が大好きなルイス・ポールセンのPH5が、所在なげにぶら下がっていました。建物の外観をご主人主導で決めて、インテリアは奥様まかせにした結果でした。
その帰り道、私は思ったのです。
これからは、建築もインテリアも、トータルで提案できる人が日本にも必要だと。以前の私のように、感性や雰囲気で、何となく作り上げてはだめなんだと思いました。
これが、私がセオリーに基づくインテリアを、本場の英国で学びたいと思ったきっかけです。
JAPANTEXで登壇した友人は、得意とするジョージアンスタイルのクラシカルな窓廻りの装飾の話をしていました。一方で同時に登壇していた男性は、モダンな雰囲気で花柄と無地の生地を合わせており、それぞれに個性があり、魅力的でした。
インテリアの選択は、自由でいいと思います。インテリアや建築は、誰が一番とか、順位をつけることではなく、あくまでも住まう人(クライアント)が「楽しい」「幸せ」と感じる空間に仕上げることが必要です。
ただし、トータルバランスが美しくないと、一つ一つが好きなものでも、雑多な要素が混在する、いわゆる「おもちゃ箱をひっくり返した」ような状態になり、住まう人の満足度は結果として下がってしまいます。
そういう意味で、デザイナーは、コンセプトを決めて船頭役としてプロジェクトに参画していくことが、非常に大切な役割だと思うのです。
またインテリアや建築には、芸事にも通じる考え方があり「これで終わり」という考えは私にはありません。
数学の問題のように、10問解けたので終わり、その答えは必ず一つ、ではないのです。長い時間をかけて育てていくものであり、また私たちデザイナーも常に努力と勉強を怠ってはなりません。インテリアを専門的に学んで、特にそう思います。
日常生活の中でも学び続けること。感じ続けること。成長し続けられるように努力すること。それが、作り出すデザインにも影響してくる気がしています。この気持ちを忘れずに、これからも次のクライアントに寄り添いたいなとビックサイトを後にしたのでした。