今年もあと半月。例年に比べ、さほど寒さは感じませんが、デパ地下でもクリスマスやお正月の準備のコーナーが大盛況です。
さて、こちらは、今年9月ロンドンで執り行われた国際的アワードのインテリアデザインスキーム-グローバル部門の部門優勝に輝いた「蔵のある家」のテーブルの写真です。
私のプロジェクトでは必ず、テーブルまでしっかり飾りつけてから、写真を撮ります。私がインテリアを学んだイギリスでは一般的に、テーブルトップのコーディネーションまでインテリアデザイナーの仕事に含まれます。この写真に写っているイギリスの照明メーカーのインスタグラムで、本場のイギリス人からライティングの使い方とテーブルのバランスが、お手本のようだというコメントと共にご紹介いただいたことが、今年の私の喜びの一つです。
「フィニッシングタッチ」という言葉をご存じでしょうか。試しにグーグル検索してみると、「切花用に使われる鮮度保持剤」という結果でがっくりしましたが、これはれっきとしたインテリアの専門用語で、インテリアデザインを完成するための装飾とそのアレンジを指します。そして、これはデザイナーのセンスと経験が如実にあらわれるポイントでもあります。
ソファーにクッションを飾ったり、コンソールやテーブルに花を飾ったり、飾り棚にブックや小物を入れたりして、暮らしのイメージを写真から感じ取ることができるようにします。海外では、このフィニッシングタッチを施して撮影するのが常識です。
私は、専業主婦だった時期もありますし、フラワーアレンジメントやテーブルコーディネート、お料理も一通り習いました。ですから専門家ではありませんが、撮影時のセッティングはすべて自分で行っています。 (フラワーアレンジや鉢物は、信頼しているショップにイメージやカラーをお伝えし、依頼しています。)
いつも撮影前にこのフィニッシングタッチを行いますが、ティンカーベルが魔法の粉をかけるように、思いをこめてセッティングします。セッティング後の様子をクライアントの特に奥様がご覧になるとほとんどの場合、「わぁ素敵! ホテルとかレストランみたい♡」とおっしゃいます。そんなときは心の中でガッツポーズをしています。
また私の場合は、映画のワンシーンを作るような気持ちでセッティングを行っています。個人的には、インテリアスキームやイメージに一番マッチするようなフィニッシングタッチとは、例えば空の椅子に、あたかもイメージする人物が座っているように見えたりすると、自分の中では合格です。
「蔵のある家」のマンケイブでは、中年の色気のあるイケオジが遊んでいるイメージで作りこみました。登場人物は、クライアントとその友達という設定ですが、その友達は海外から遊びに来ているハリウッドスターのあの方とあの方に似ている…。という感じで、勝手にキャスティングしています。そして撮影時には、カメラマンにそのストーリーをすべてお話して、こんなイメージだと音楽も流しています。
過日、新しい商品とトレンドをチェックするために「テーブルウエア・フェスティバル」に行ってきました。いつもは2月ですが、今年は、クリスマスとお正月前ということもあり、各メーカーの展示もそういった雰囲気のテーブルが多かったです。また海外でも人気のある有田や鍋島焼などの陶磁器や、輪島や木曽などの漆器も多く見られました。
日本には、美しい四季があり、和室にはトコがあり、季節に合わせた掛け軸をかけて香を焚き、季節ごとの室来を楽しむ伝統があります。現代のマンションなどでは、そのようなスペースも少ないのですが、コンソールや飾り棚を置けば、魅せるフォーカルポイントは作れます。
クリスマスシーズンとお正月は、一年で一番スタイリングにトライしやすい時期とも言えます。フィニッシングタッチで、魔法の粉を振りかけて皆様の心が満たされるインテリア空間を作ってみてはいかがでしょうか。