先週のFRENCH DESIGN AWARD受賞のお知らせの後、マンケイブの話をもう少し詳しく聞かせてくださいというご意見を頂きましたので、少し紐解いてみたいと思います。
私はインテリアデザインだけしていると考えられている方も多いようなのですが、私は、インテリアアーキテクトですので、設計からインテリアデザインまでトータルで考えています。だだ専門的な話をしてもこれを読んでくださる方にはつまらないのでついついインテリアの話や日常の話をしています。
インテリアを考える時、自分が映画監督や舞台監督になった気分で、空間を考えており、ストーリーを空想している事が多いと最近気づきました。撮影の時カメラマンさんとそのアシスタントの方に「こんなイメージでこういう雰囲気でこんな匂いがする感じで撮ってください。」と面倒な注文を付けており、撮影中音楽を流していることもあります。「匂い?」ってと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、その無茶苦茶な注文を聞いてくださるカメラマンさんには、感謝の言葉しかありません。
生まれ変わっても設計やデザインのこの仕事を選びたいと思いますが、もし別の生き方ができるならば、映画監督という仕事に憧れています。
『蔵のある家~House with JAPANESE KURA』を設計している初期のころクライアントから遊びながらビジネスの話もできて国内外からの賓客をもてなす部屋を作りたいというお話を伺いました。
咄嗟に、応接室やプレイルームといった昭和感のある普通の感じにはしたくないなと思いましたし、部屋の名前もどうしようかなと考えて「マンケイブ」と呼ぶことにしました。ちなみに申請上の名前は、「応接室」です。(笑) 排煙免除の区画の関係上、鉄扉をつけてプラスターボードも15ミリ。小屋裏まで貼り上げていますので、音漏れもありません。ゴルフシュミレーションに必要な天井高が決まっていたので、これを棟の近く(屋根の一番高いところ)に配置して設計を進めていきました。
「マンケイブ」Mancave は、海外では浸透している単語ですが、日本人には馴染みのない単語かと思います。直訳すると「男の洞窟」まさに、男性が集って楽しむ場所です。
まず考えたのは、大人の男が集う場所。マスキュリンでありながら品格のあるエレガントな空間にしたいと思いました。不思議の国のアリスがウサギさんによって不思議の国に導かれたように。浦島太郎が竜宮城に行って時を忘れて過ごしてしまったように、どこの国か、いつの時代か…過去か未来か、はたまた異次元か、自分がどこにいるのか、つい日常を忘れてしまう、羽目を外して何時間でもこの洞窟-ケイブに籠ってしまう。
そして、写真だけ見るとここはロンドンにあるのかNYかビバリーヒルズなのか、はたまたドバイなのか無国籍でわからなくしたいと思いました。
なんだかわからないけど、とにかく色気のある空間にしたい。と思いました。
大人の男が集うマスキュリンでありながら品格のあるエレガントで色気のある空間。
次に私は、この空間でクライアントと遊ぶ主演ハリウッド俳優を勝手にイメージしていました。本当にオファーしたら大変ですが、想像は無料です。
マーロン ブランドさん、ロバート デニーロさん、アルパチーノさん。ご存じ映画『ゴッドファーザー』 の面々です。そして、ビリヤードといえば『ハスラー』のポール ニューマンさん。
あとは、わたくしの個人的趣味でレオナルド ディカプリオさんです。ブラッド ピットさんもいいです。ちなみにトム クルーズさんは、大好きな俳優さんですが、イメージしませんでした。
気分は、映画監督です。
あなたならどんな俳優さんをキャスティングしますか? そんな空想遊びをするのも楽しいです。
(© 撮影:藤井浩司/TOREAL)
彼らはここに座りゲームをして、シガーをたしなみ、ビリヤードをしてワインの話をしたり、ゴルフシュミレーションをしたり映画を見たりそして、ついでに商談も行うのです。
そんな姿をイメージしながらレイアウトを考え、柱位置を考えて梁などを調整して作り上げていきます。男が惚れる品の良いセクシーでなくてはなりません。
エチケットのしっかり見えるワインセラーは男の夢です。ここでポールニューマンさんとビリヤード対決をしているあなたの姿を創造してみてください。映え間違いないです。
(© 撮影:藤井浩司/TOREAL)
こんな風に想像しながらデザインすると朝まで没頭してしまったとか結構実はありました。
もちろんバックミュージックは映画『ゴッドファーザー』の あの曲です。
さて、週末。今日もこの「マンケイブ」にどんな方々が集っているでしょうか。クライアントの喜ぶ顔を想像してしまいます。
TGIF!! よい週末をお過ごしください。